1行家計簿 世界一かんたんにお金が貯まる本(天野伴)

 「1行家計簿」を1行で済ましてしまう、そんなわけにはいかなった。人呼んで 家計簿王子 による満を持しての初の単著では、自らが持つノウハウや体験者による経験談を注ぎ込んだ結果、1行家計簿は、とうとう、1冊の本になってしまった。

1行家計簿―――世界一かんたんにお金が貯まる本

1行家計簿―――世界一かんたんにお金が貯まる本

 家計簿生活を8歳からやってきた著者ならではの「引き出し」が本書で一挙に開陳されており、ピンポイントで記帳するお小遣い帳を通して、意識を改革し、生活習慣を改善することを説いている。

 内容的には、手軽に読めてしまう。自分がムダと感じていたことを、一念発起して見える化するための方法を、具体的に親しみやすい語り口で教えてくれる。お金との付き合い方を意識するようになった若い女性、男性のケーススタディには実感が伴っており、この本を手にした読者も腰を上げるよう促してくれる。

 「やめる・減らす・替える」、「投資・消費・浪費」といった響くキーワードは、お金以外のことにも応用が利くだろう*1。他にも、家計簿をゲーム感覚で楽しんでみること(いわゆる、ゲーミフィケーション化)や、意外なライフハック(2つの口座を同一金融機関に開設してみる)など。

 著者は、一方で、自身が完全無欠な家計簿人間というわけでもなかった面も覗かせている。家計簿に関して挫折してしまったことを告白したり、家計簿に費やす時間について費用対効果を論じたりして、人それぞれに家計簿の可能性があることを明らかにしている。

 世界一かんたんにお金を貯めるために、1000円+税 で済むなら、十分安いものである。重っ苦しさ、煩わしさ のあるカケイボに対する印象が、この本によって、ずいぶん変わり、構えがちな肩の力が抜けることだろう。

 あとは、さっそく、実践、あるのみ、だ。

*1:実際、他書を彷彿とさせるくだりも登場する。レコーディング・ダイエット決定版 (文春文庫)